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民事信託コラム第11回 『信託契約を行った場合の税金関係について』

2016年11月02日

「信託契約をしたらよく節税になるのか?」と聞かれますが、節税になるわけではありません。税金が掛かるような所有権の移転が生じないから、課税されないと言うのが正しいでしょうね。

今回は、そうした信託契約を行った際の税金に関する考え方を簡単に説明してくことにします。

1 相続税

先ず、特に質問の多いのはこの相続税ですね。受益書が他界し、その受益権が次の受益者に引き継がれた場合、あるいは受益者の他界により信託契約が終了し、残った信託財産が指名された者に帰属した場合、「相続」を原因として財産権が移転した際は相続税の課税対象になります。

なお、相続税法における信託財産の評価額は、信託財産とする前でも後でも基本的に同じです。そのため、土地であれば路線価等を、建物は固定資産税評価額を基に評価します。

相続税の評価については小規模宅地等の特例など減税措置もすべて適用となります。

つまり、信託契約は相続税評価は全く関係はなく、節税となることはありません。

2 贈与税

贈与税については大きく2通りがあります。

まず一つの方法は「自益信託」と呼ばれる信託の仕組みで、例えば父親を「委託者」、長男を「受益者」として設定し、「受益者」が父親本人とした場合、「委託者」と「受益者」が同じですので、この場合は財産の(利益)の移転がないため贈与税の課税対象外になります。

もう一つの方法は「他益信託」と呼ばれる信託の仕組みで、「委託者」は父親、「受託者」は長男、「受益者」を母親として設定した場合、信託契約を締結した時点で父親から母親へ財産権が移転したとみなされ、贈与税の課税対象になります。

贈与税の納税方法については、相続時精算課税制度も利用することができます。

3 所得税

信託においては、受益者が信託財産を保有しているものとして考えるので、その収入も受益者に帰属します。例えば、賃貸物件を保有している父親が「委託者」として長男を「受託者」とする信託契約を結び、引き続き「受益者」は父親とした場合は賃貸物件の家賃収入は父親のものになり、父親が従来どおり所得税を申告する必要があります。

4 不動産取得税

不動産を信託財産として信託契約に基づき不動産登記を行うと、登記簿上は登記の目的欄に「所有権移転」と明記されますが、「権利者その他の事項」欄に「登記原因」が「信託」により受託者が所有者として記載されるものの、受託者が実際に不動産を取得したことにはならないので、不動産取得税は課税されません。

また、信託契約により受益者が誰になっても不動産取得税はかかりません。

5 登録免許税

相続の登録免許税とは、相続登記で不動産名義を書き換えるときに発生する税金です。

相続による登録免許税は、相続の対象となる不動産の固定資産評価額の0.4%がかかります。

ところが、信託契約の場合は次のようになります。

(1) 信託設定時(委託者から受託者への信託による所有権移転)の所有権移転は非課税となります。

(2) 受益者の変更時(受益者の相続や受益権の贈与・売買)は不動産1個につき金1,000円となります。

(3) 受託者の変更時(受託者の死亡等による変更)は、非課税となります。

(4) 信託の終了時(受益者の死亡等信託契約終了事由が発生)の信託末梢は、不動産1個につき金1,000円となります。

登録免許税は委託者と受益者の関係でどのような形で所有権が移転するかで、多少登録免許税がかかる場合もありますが、一般的な相続による所有権移転登記に比較すると軽減されています。

6 固定資産税

固定資産税は、信託契約により登記名義人を受託者の長男とて登記した場合、翌年から登記名義人の長男に納税通知書が送られてくることになります。

ただし、本当に支払い義務のあるのは受益者(父親)です。

固定資産税は、原則1月1日現在に固定資産課税台帳に記載された人が納税義務者となりますが、移転登記をすれば、法務局から固定資産税課に所有権が移転した旨の通知が行くので、固定資産課税台帳の名義は受託者に変更となります。

つまり、行政に対する納税義務者は受託者になりますが、受益者と受託者の管理する信託口口座から納税額を支払うことになります。

以上が信託契約を行った場合の税金の仕組みになります。詳しくは信託に精通した税理士に相談することが重要となります。

次回は、民事信託を活用した様々な事例を取り上げて、民事信託のメリットについて紹介していくことにします。

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