今回は、私どものグループ会社のサービス付高齢者住宅に入所された方からよくある質問を紹介し、民事信託を活用した優れた解決法について紹介します。
このケースは、油断しておくと気が付かないまま放置された空き家が後程多くの問題に発展する、ごく身近なケースですので、是非民事信託を活用して頂きたいと思います。
例として、現在、古い一軒家に一人暮らしをしている80歳の母親がいます。最近、足腰が弱くなり一人で生活させるのが不安なため、息子が施設への入居を考えています。
母親も施設に入居することについては反対していませんが、たまに自宅に帰り庭の手入れや自宅の風通しをしたいと考えています。
このような場合、民事信託契約をせずに母親が施設に入居した場合どうでしょうか?
母親は、高齢のため年とともに認知症を発症し、意思判断能力が失われる状態になってしまった場合は、自宅の管理や処分に関し大きな問題となってきます。
息子が近くにいれば、使われなくなった自宅を管理することは出来ますが、母親の生活費や施設利用料を捻出する目的で空き家として放置状態の自宅を売却しようとしても、自宅の名義人である母親が意思判断能力を喪失していたら、もう自宅を売却したくてもできません。
次に、民事信託契約を使うとどうなると思われますか?
母親が、施設に入所と同時に自宅の所有者である母親を「委託者」、息子を「受託者」、そして「受益者」を母親とする民事信託契約を母親の元気なうちに息子と締結します。
母親は入所後、入所前に思い描いていたとおり月に1・2回は帰宅し好きな庭の手入れや自宅の風通しもできるし、泊まりたい時には泊まることもできます。そして、徐々に意思判断能力が低下し判断できなくなったとしたら、息子の判断でその不動産を売却することも、賃貸に出すこともできます。
民事信託契約により、成年後見制度などを使わないと自宅の売却や賃貸物件としての活用などが難しかったことが、息子の判断で自由にできるようになります。
自宅を売った時の売却代金は「受益者」である母親のものですので、その管理を息子が行い、母親のための施設入所費用等に有効に使うことが出来ます。母親が他界し現金が残ったら、これは相続財産として息子が取得することができます。
このように、母親が元気なうちに民事信託契約を締結しておけば、成年後見制度を使った場合に比べ、母親の財産を簡単かつ迅速に有効活用することができます。
もし、高齢者の両親が施設に入所された場合、残された財産、とりわけ不動産をどうすればいいのかお悩みの方は、是非、民事信託契約をご検討ください。
次回もまた民法ではなかなか解決の難しい相続について、民事信託を活用した相続事例について紹介していきたいと思います。